4話

7/11
前へ
/102ページ
次へ
 そう聞かれて真っ先に浮かんだのは秋吉の顔だった。  こっちに来てからというもの、まともに話しているのは秋吉ぐらいしかない。  しかし相手が金髪のヤンキーだと知ったら雄一はびっくりして腰を抜かすだろう。  それに友達というよりは、塾講師とその生徒のような関係だ。  今日だって、全然勉強が進んでないのに勝手に帰ってしまった。  そう考えながら朝陽は、引き留める自分の言葉を無視して、感情のまま教室を出ていった秋吉の姿を思い浮かべる。  好き嫌いが激しいほうじゃないが、好きか嫌いか二分するとしたら、  はっきりいって嫌いな……苦手なタイプだ。  地方の田舎だからだろうか、雄一たちがいた学校のほうがもっと優しくて、のんびりしてて、おだやかな空間だった。 『たくさんできたよ』 『よかった。朝陽くんなら、すぐに友達できると思ったよ』 『そうかな』 『でもじゃあ、何が慣れないの?』 『言葉とか、学校のルールとか、すこしずつ前とは違って』  雄一は朝陽の話をゆっくり聞いてくれた。  静かなカフェでお茶しているみたいに。 『また、みんなと会いたい』  朝陽はそう彼に送った。  それが、朝陽の本心で今最大の願望だった。  みんなに会いたかった。  できれば戻りたかった。 『僕も会いたいよ』 と雄一から嬉しそうな絵文字とともに返事がくる。 『あ、そうだ。今こんなアニメが面白くて……』  その後、雄一から好きなアニメや漫画の話を聞いた後、必ず近いうちに会おう、と約束してメッセージを終えた。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加