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「たしかにお前の説明よりわかりやすい」
最後まで観終わった秋吉が、満足気にそうつぶやいた。
面白いなら、面白いとだけ言えばいいのに、わざわざ自分のことを持ち出され癇にさわる。
今すぐ教えるのをやめようかとも思ったが、せっかく難所を乗り越える手段が見つかったのだ。
ここは何とか歯を食いしばって耐えた。
「じゃあ今晩、この続きを家で観てこれる?」
「え?なんで。ここで観ればいいじゃん」
「それだと間に合わないんだって」
アニメを観ているだけで、すべて足りるわけじゃない。
「そりゃお前の教え方が非効率だからだろ」
「僕は僕なりに最短距離でやってるよ」
「どこが。テストに出るところだけを教えろって言ったのに、お前は……」
「答えだけを丸暗記させるような教え方はしないって最初に言っただろ。約束したじゃないか。それが嫌なら、教えない」
今までの不満もあって、ついつい言葉に勢いをつけすぎてしまった。
焦ったころにはもう遅く、秋吉が何か考えるような目でこちらを見ていた。
けれど、朝陽に後悔はなかった。むしろ今までの苛立ちを本人に素直にぶつけられて、かすかに清々しい気分さえしていた。
「うぜー。ムカつく。マジ」
「……」
「なんでこんなやつに頼んだんだろ」
「……」
秋吉はそう言うと、朝陽に背を向けて窓の外に目をやった。
そう言われても朝陽の中に恐怖心が湧いてこなかったのは、彼の言葉は汚く刺々しいのに、口調はどこか諦観が含まれたものだったからだ。
彼は大きくはーっとため息をつく。
「……わかったよ」
「え?」
「観てこりゃいーんだろ」
秋吉は観念したようにそう言った。
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