5話

1/5
前へ
/102ページ
次へ

5話

「おい、これ見ろ」  定期テスト終了後、採点されたテスト用紙をこちらに見せて、秋吉は得意げに言った。  日本史67点。  一瞬、何をそんなに喜んでいるのか理解できず、とはいえ何かいい加減なことを言って怒られるのも怖いので、とりあえず愛想笑いを浮かべる。    よくよく考えてみると、そういえば前回は赤点だったとか言ってたっけ、と秋吉のやたら嬉しそうな理由にたどりつく。25点からの67点なら、すさまじい成長といえるだろう。 「おお。すごいね」  流れを把握した朝陽は、そう言った。少し上から目線だったか、と焦ったが、幸い睨みつけられることはなかったのでほっと胸をなでおろす。 「だろ。さっすがオレ。天才かも」 「いやまあ……」 「あ?」 「そうだね」  自分の精一杯の手助けには何一つ感謝の言葉もなく、ややむなしい気持ちも沸いたが、本人がこうも無邪気に喜んでいるので、今はぐっと押しとどめておく。 「ちなみに、他の教科は?」 「現代文が49点。生物が55点。で、数学は80点」  なんだって?
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加