5話

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 朝陽は思わず、え、と声を出し、耳を傾ける。 「だからー、現代文が49点。生物が55点。で、数学は80点」 「……数学が80点ってホント?」 「見ろよ」 「本当だ。すごいよ。公式を教えただけなのに」  それに1日1時間ぐらいしか勉強していないのに。 「だろ。天才かもしれない」 「……本当に、放課後以外まったく勉強してないの?」 「疑ってんのか、てめー」 「いや、そんなことは……」  たしかにこの秋吉に限って、わざわざ家で勉強するわけがない。  わかりきっているのに、不用意な発言で怒らせてしまった。  朝陽がバツが悪そうにしていると、秋吉は数学の答案用紙を見せてきた。 「本当に何もやってねーよ。ーーまあでも、計算だけは昔からあんまり勉強しなくてもできたっつーか」  怒りはどこへやら、まるで照れくさそうに目をそらしていた。 「へえ」  いわゆる完全な『理系』なのだろう。  朝陽の知り合いにも、「数学だけは授業聞いているだけで解ける」という人がいた。 それを物語るように、現代文と生物はまだまだ低い。それから古典も。 「よかったよ。力になれて」  秋吉はにっと歯を見せて嬉しがる。  周りの注目されているのは気になったが、かわいいなと思ってしまった。
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