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『犬猫じゃないんだから――』
小さな覚悟で背負えるわけが無い。真尋の将来をいっときの感情でどうにかしようとするなんて無謀だ。
謙斗くんの家に着くと謙斗くんのお母さんの運転する車に乗りプールまで連れてってもらった。私は真尋のお母さんの知り合いということで話はつけていた。
「冴子さん、今日はほんとうにありがとうございます。真尋にとって貴重な夏休みの思い出ができます」
謙斗くんのお母さんは冴子さんと言った。どうぞお気軽に呼んでくださいと言われた。歳の頃は三十半ばくらい。私より少し上くらいでそれほど離れてないようにも思えた。気品溢れる柔和な表情、真尋から聞いていた通り余裕のある家庭というのは身なりや佇まいからして想像するにたやすかった。
「加奈子さん、謙斗の思い出作りになると思うのでこちらこそ誘っていただきありがとうございます」
ふわりと口角を上げて眦を下げた。少し上にいる富裕層の人間特有の感じが冴子さんからは全くしない。それは最初に電話をしたときから感じていた。
「なあ真尋、やりたがってたカードゲーム、後で一緒にやろうぜ」
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