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後部座席では子ども同士が盛り上がっている。
「あ、僕そのカード持ってないんだ、だからできないんだ」
胸がどくんと跳ねた。そして早鐘を打つ。
そうだ、失念していた。カードセットのひとつくらい買ってあげればよかった。慌てて後部座席を振り返る。きっと真尋は眉を下げているはずだ。もしかしたら眸から涙が溢れてきているかもしれない。
「俺のあげるよ! 昨日買ってもらったんだ。どっちにする?」
すかさず謙斗くんがそう言った。真尋の眉も下がらないうちにだ。
「え? いいの?」
そう言いながら真尋は私の方を一瞥した。もらっていいかのお伺いを立てているんだろう。私は困って冴子さんの方を向いた。
「貰ってくれますか? 謙斗楽しみにしていて、ふたりで開封の儀をしてどっちがなんのレアカード引くか楽しみだって、そうやって遊びたいからって昨日主人に真尋くんの分も買ってもらってたんですよ」
「あっ、お金払います」
後ろの子どもたちには聞こえないように小声で冴子さんに言った。すると冴子さんは小さく首を振り「貰ってください」と小声で答えた。
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