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 そこへ謙斗くんもやってきて軽く桃の争奪戦になった。 「焦らなくてもまだあるから」  冴子さんのその言葉も聞こえているのかいないのか、一気にふたりありったけの桃を詰め込んだ。 「よく噛んで飲むんだよ」  だけど、何かおかしい。  異変を感じたのは、その後すぐだった――。 「なんか……」  力いっぱいの声だった。魂の叫びにも似ていた。なんとか振り絞った、そんなような声だった。かぼそく真尋が言葉を吐いた。 「真尋? どうしたー?」  そんなに深刻じゃないと思い気の抜けたように聞き返した。 「うーん」  だけど、ちらと真尋の顔を見た瞬間、これはただごとではないと気がついた。 「真尋くん顔赤い」 「なんか、痒い」  そう言うと、目から腕からあちこちを掻きむしりだした。 「真尋? どうしたんだろう」
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