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 不安が顔に出ないように、私の顔が余計に真尋に不安な気持ちにさせないように努めて冷静を装った。冴子さんもその気持ちを汲んでくれたように見えた。だけどただひとり、そんな大人の“不安にさせないように空気を読む”なんてものとは無縁の文化にいた人間がいた。それは子どもの文化の中で生きている謙斗くんだ。 「おい、真尋どうしたんだよ、顔真っ赤だぞ」  謙斗くんは焦ったように困ったように明らかに動揺をしだした。そして、しだいに真尋は口の中が痒いと言いだし、くしゃみをいくつか続けてした後、気持ちが悪いといいさっき食べたお肉を戻してしまった。  それまでの時間は大きな波が押し込んでくるように一瞬で呆気に取られている間に全てが起こった。すぐに救急車を呼び、真尋は病院へ運ばれた。
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