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 すぐに真尋のお母さんに連絡をした。冴子さんとは一旦別れた。ご主人が戻ってきたら自分もすぐに病院に向かうと言ってくれた。正直気が重かった。だけど自分の保身に走ってもしょうがない。救急隊員の人は「大丈夫ですよ」と柔らかく言う。ほんとうによくある大丈夫なことなのか、動揺を落ち着かせるための常套句なのかは分からない。ただ、真尋の異変が治ること、それだけを祈っていた。  病院に着くと真尋はすぐ処置しに向かい、間もなく真尋のお母さんが病院に駆けつけてくれた。続けて冴子さんの顔も見えた。よかった。保険証がないのも不安要素だったし、「あなた誰ですか?」と病院の人に聞かれたときなんて答えるのが最適解なのかずっと考え込んでいた。「ご家族じゃないんですか?」「ご家族はどこですか?」「どう言った関係ですか?」「ご家族に許可は取っているんですか?」「もしかして……」ごくり、と唾を飲み込みひゃくとおばんのダイアルが押される、そこまで私の妄想であったが、それもこれも真尋のお母さんが来てくれたことでそれは全て杞憂に終われた。
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