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 すると冴子さんはくすりと笑った。バレなければオッケーとでも言うようにいたずらに笑う。 「それどころか大好きなうずらの卵をたくさん入れてくれる」 「まあそれは確かに」 「そして帽子の話もしていたね」 「帽子?」 「麦わら帽子、お母さんは気づかなかった、気づけなかったんじゃないかな? 真尋くんだって嬉しくて報告しただけ、加奈子さんだって親切で縫ってあげた、誰も悪くない、だけど真尋くんママは感じちゃったんじゃないかな、自分がいなくても真尋くんが成長していくこと、真尋くんは加奈子さんへ母の代わりのような錯覚をしていること。それとね」 「まだなにかあるんですか?」 「うずらがそんなに好きなんて知らなかった言ってくれればいいと怒られたと、そして加奈子さんとの写真を送ったらしいけど、こんなに元気にやってるよって意味でね」 「考えてみれば……色々配慮にかけた言動でした」  あの写真、ふたりで自撮りした写真。とてもよく撮れてたから私にも送ってもらって待ち受けにしてる。  それが真尋のお母さんから真尋を奪う行為になっていたのか。  
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