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 そしてもうひとつ、エチオピアオパールというものを出してもらった。だけど、生で見たら写真で見るよりそんなに夕焼けを感じなかった、残念だった。あの日、あのときのあの夕焼けのようなオパールが欲しかった。すると宝石売りの男性はそのエチオピアオパールにライトを照らした。刹那、一面に広がった。あの日のあの夕焼けが。夕焼けを背に踊っていた真尋がこの石の中に閉じ込められているような感覚に陥った。私はこれも購入した。こちらはルースのままケースに入れてもらい、大切に持ち帰った。  真尋の施設に真尋の荷物を私に行く、これが私の最後のミッションだった。もちろん真尋のお母さんは郵送の意味で住所を教えてくれたんだとは思うけど、私は迷わず自ら向かった。もしかしたら追い返されるかもしれない、だけどもう一度真尋に会いたかった。あのままお別れは嫌だった。  施設に着くと、何人かの子どもが外にいた。真尋を探す。探せないわけない、見間違えるわけない、私は真尋を探すことができる。大きな自信を胸に目を凝らすように中を見ていたら訝しげな顔をしながら職員さんがフェンスの方に近づいてきた。 「なにか?」
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