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 明らかに不審に思われていることは、火を見るより明らかだった。 「棚橋真尋に会いたいんですが」  五十くらいの女性はひとつ、眉を寄せた。 「あなたは?」 「あ、私は……」 「加奈子さん?」  そこへ、聞きなれた声、愛しい声が耳を通り抜けた。 「真尋!」  真尋の笑顔が弾ける、それを見た職員さんが私への警戒レベルをひとつ下げた。 「真尋くん、知ってる人?」 「あ、えっと、うん、親戚のおばさんです」  機転を利かせてそう言った。私はそんな機転が利かすことができるほど大人になった真尋に驚いた。まだ数週間しか離れていないのに。成長に喜び、胸が掻きむしられるような感覚に陥った。 「あら、失礼しました」  真尋のその言葉に途端に表情は緩くなった。 「中にどうぞ、お茶でも飲んでってください」 「あ、いえ、お構いなく、あの、少しだけ真尋と話してもいいですか?」 「ええええ、もちろんですよ、あちらから中にお入りください。ではごゆっくり」  そして女性がその場から離れた。私はフェンスの中に入って、刹那膝立ちをして真尋と同じ視線になり、真尋を抱きしめた。  ゆるり、と涙が溢れてきた、右頬にぬくもりが感じる、さっきまで遊んでいたのか熱を持った真尋の体からぬくもりが感じられ、生きていることを実感した。  
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