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真尋の感情が少し落ち着くと私はクローゼットから服を取り出した。洗面所に向かい歯ブラシや洗顔を取り出し乱雑に詰める。
「加奈子さん、なにやってるの?」
ひっくひっくとまだ涙の残像が残る中、真尋か不思議そうに声を出した。
「とりあえず逃げよう」
逃げきれないのはわかっている。だけど教えたかった。真尋は捨てられてないって、真尋のことこれだけ好きな人間がいて、真尋のこと、大切に思っているからこんな無謀なことをやるって、いつか気づいてくれたら、それでよかった。
煩わしかった携帯電話の電源を再び入れ、着信履歴から番号をスクロールし、通話ボタンを押した。
「もしもし? 加奈子さん? 今どこ?」
「冴子さん、ごめんなさい」
「ちょっと何があったの、真尋くんママすごい怒ってて警察に電話したからもうすぐ加奈子さんのところ行くよ、逮捕なんてことになる前に真尋くん戻した方がいいわよ」
「冴子さん、ひとつお願いがあるんです」
「なに? なんでも言って」
「真尋は無事です、真尋を傷つけることは決してしません、真尋のことは体も心も傷つけません、それだけは信じてください」
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