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八年後
「いらっしゃいませ、おふたり様ですか? こちらのテーブルにどうぞ」
八月のランチタイムはいつもより忙しい。仕事中の常連さんはいつも通りでその上親子連れも多くなる。もうすぐピークの時間が終わる。一段落といったところだ。
「これ三番テーブルさんにお願い、終わったら休憩入っていいよ、悠里と出てくるだろ?」
「うん」
出来上がった料理を三番テーブルに運ぶ。それと同時にCLOSEDの看板を出しに外に出る。今日も無事大きなトラブルもなくピーク時の食事の提供ができた、この瞬間、私はいつも首から下げているサファイヤのネックレスに触れる。そして口角を上げる。
「あ、閉店ですか」
CLOSEの看板を持ったまま首を振る。
「いえ、どうぞ」
「わ、ギリギリセーフですか? ありがとうございます」
二十歳前後の爽やかな笑顔の青年。この笑顔、どこか懐かしさを覚える。
「新規一名様ご案内いたします」
そう言うと恨めしそうな顔をしてこちらを睨んでいる子がひとり。
「ごめんごめん、ちょっと待ってて」
そう言うと子は唇を尖らし片付け途中のカウンターの椅子に腰掛けた。
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