53人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご注文はお決まりですか」
お水をテーブルに運びメモの準備をする。
「そうですね、これください」
指さされたメニュー表“特製カレー”の文字。
「特製カレーでございますね。かしこまりました」
「トッピングでこの上に乗ってるうずら多めにできますか?」
「もちろん、できますよ、ではうずら多めの特製カレーで、少々お待ちください」
「あ、すみません」
オーダーを通そうとした瞬間、声をかけられた。
「はい?」
「これって正式名称なんですか?」
「正式名称? 特製カレーでございます」
「“加奈子さんの”特製カレーじゃなくて?」
彼はそう言っていたずらに笑う。
私は心臓が早鐘を打つかのように制御できなくなっていく。声にならず胸の奥から溢れ出す熱い思いに抗えずただ涙が溢れた。
「加奈子? どうした?」
厨房から声がする。
私は大きく深呼吸をして瞬きをした。はらりと涙がこぼれ落ちた。
「加奈子の特製カレーひとつ」
厨房にそうオーダーを通した。
「加奈子の? ……いつもの特製カレーのことだね?」
釈然としない様子で厨房はカレーの準備を始める。
最初のコメントを投稿しよう!