八年後

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「ご注文はお決まりですか」  お水をテーブルに運びメモの準備をする。 「そうですね、これください」  指さされたメニュー表“特製カレー”の文字。 「特製カレーでございますね。かしこまりました」 「トッピングでこの上に乗ってるうずら多めにできますか?」 「もちろん、できますよ、ではうずら多めの特製カレーで、少々お待ちください」 「あ、すみません」  オーダーを通そうとした瞬間、声をかけられた。 「はい?」 「これって正式名称なんですか?」 「正式名称? 特製カレーでございます」 「“加奈子さんの”特製カレーじゃなくて?」  彼はそう言っていたずらに笑う。  私は心臓が早鐘を打つかのように制御できなくなっていく。声にならず胸の奥から溢れ出す熱い思いに抗えずただ涙が溢れた。 「加奈子? どうした?」  厨房から声がする。  私は大きく深呼吸をして瞬きをした。はらりと涙がこぼれ落ちた。 「加奈子の特製カレーひとつ」  厨房にそうオーダーを通した。   「加奈子の? ……いつもの特製カレーのことだね?」  釈然としない様子で厨房はカレーの準備を始める。
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