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8月8日。木曜日。
思い出のレストランに足を運んだ。
プロポーズした日、僕はナスとベーコンのトマトソースパスタを食べた。
パスタはトマトソースが一番好みだ。
即決した僕を見て、君は「またぁ?」と笑っていたっけ。
僕は好きになったものには一途なんだ。
プロポーズした日と同じパスタが僕の目の前に置かれた。
フォークで麺を絡め取り、スプーンで巻いて口に運ぶ。
そうだ、スプーンを使って巻くのも君に教えてもらったんだっけ。
今となってはフォークだけで食べるなんてありえない。
トマトの風味が口の中にふわっと広がる。ナスはトロトロで、ベーコンは分厚くて。
「……うまい」
思わず声が漏れた。食事をして、うまいと思うのは久々だった。
あの日はポケットの中の指輪のことで頭が一杯で、味を感じる余裕もなかった。
そわそわする僕に君は何かを察して、くすくす笑っていた。
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