殺したいほど君を愛してる

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雪は中学の同窓会があるといい、家を出た。 嫉妬の感情は無かった。 雪は必ず帰ってくる、そう確信していたからだ。 しかし、雪は帰ってこなかった。 早朝、おれは見知らぬ電話番号からの電話で起こされた。 「はい、もしもし」 寝ぼけ、ガラガラの声でそう言う。 電話の向こうは何故か冷淡(れいたん)な雰囲気が漂っていた。 「雪さんの彼氏さんですか?」 見知らぬ女の声だった。 「はい、そうですけど」 「落ち着いて聞いてください。昨日の同窓会で、雪さんが亡くなりました」 身体に電撃が走る感覚を覚えた。 瞬時におれは、目が覚め、辺りに雪が居ないかを確認した。 走る。 「嘘だ!」 家中を駆け、彼女の姿を探す。 彼女はいなかった。 息が切れる。 「雪さんは昨夜、川は飛び込み、自殺をしました」 理解が追いつかなかった。 彼女は自殺するような人じゃない。 昨日も、笑顔で、いってきますと、言っていたじゃないか。 冷静にはなれなかった。 だが、少しでも冷静さを(よそお)い、声を発する。 「詳しいことを……教えてください」 今にま叫びそうな心を抑え、言葉を絞り出す。 「目撃したのは私では無いのですが、”2人”で歩いている時、いきなり柵を飛び越え、川へ飛び込んだのだそう。そして、飛び降りる瞬間に遺書を渡してきたらしい。遺書のこともあって、警察に通報してみたら”自殺”と断定されたわ」 やはり、理解が追いつかない。 そんなことより引っかかる部分がある。 「雪は、誰と歩いていたんですか?」 「和也という人よ。彼も可哀想よね。目の前で人間の死ぬざまを見せられて。救えなかったことに対し悔やみ、叫び、今にもおかしくなってしまいそうだったわよ」 「雪は、自殺をするような人じゃない。動機もない。殺したんだ。和也というやつが殺したんだ!」 ついカッとなってしまい、怒鳴った。 「落ち着いてください。証拠もないですし、何より”警察が自殺とおっしゃったので間違いありません」 「けど、」 「あなたの彼女は自殺したのです。それをしっかり受け止めてください」 そんなわけが無い。 身体が拒絶反応を起こす。 「後日、雪さんの遺書をそちらへ届けます」 そういい電話は切られた。
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