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むかし昔、ある国にエレナという中年の女の人が、一人で住んでいました。
エレナは伯爵夫人ですが、伯爵の女遊びが酷くて、別々に暮らすようになっていました。
この国には、別々に暮らしていたとしても、夫婦は同じ生活水準で暮らすべきという法律がありました。
伯爵には一年間で700万ポリの収入がありましたから、法律により、伯爵は毎月12万ポリをエレナに支払うことになりました。
法律ではこのお金のことを「コンピ」と呼んでいました。
エレナには収入がありませんでしたから、コンピの12万ポリがないと生活ができません。
だけどエレナは、伯爵の側にいて身の回りの世話をしていないのに、お金を受け取ることに罪悪感を感じていました。
思い悩むエレナを見て可哀想に思った天使が、5人の妖精を呼び出し、エレナの心を軽くする言葉を届けるように命令しました。
一人目の妖精がエレナの元を訪れて言いました。
「エレナさん、伯爵はエレナさんを裏切った悪い奴ですよ。
そんな悪い奴からはお金をふんだくってやれば良いんです」
だけどエレナの心は軽くなりません。
二人目の妖精がエレナの元を訪れて言いました。
「エレナさんはコンピを汚いお金だと思っていませんか?
お金に綺麗も汚いもないんです。
何も考えずに受け取っておけばいいんです」
だけどエレナの心は軽くなりません。
三人目の妖精がエレナの元を訪れて言いました。
「伯爵はエレナさんの心を傷つけました。
心を傷つけた償いも、結局、お金でしかできません。
これはエレナさんが傷ついた代償として受け取っておけば良いんです」
だけどエレナの心は軽くなりません。
四人目の妖精がエレナの元を訪れて言いました。
「どうせ一緒に暮らしていたって、伯爵はエレナさんに生活費を渡さないといけなかったんです。
コンピを渡して自由に遊べるなら、伯爵にとって悪い話じゃありませんよ」
離れて暮らしているのにお金だけもらっているエレナの罪悪感が少し減りました。
五人目の妖精がエレナの元を訪れて言いました。
「エレナさんがもらっているコンピが月に12万ポリってことは、年間で144万ポリですよね?
伯爵の年収の700万ポリの半分にもならない金額ですよね」
同じ生活水準を維持するためのはずのコンピが、実は同じ生活ができるだけの金額ではないと気づいて、エレナは目が覚めた気分でした。
こうして四番目と五番目の妖精の言葉が無事にエレナに届き、エレナは心健やかに暮らせるようになりました。
めでたし めでたし。
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