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「生八つ橋だ! 嬉しい!!」
紙袋から取り出した箱を見て、破顔する姉。
うん。変わってないな。
心の底から喜んでいるとき、口角の右のほうがちょっとだけ高くあがるのは、一緒に住んでいた頃と一緒だ。
「親父が関西に出張で買って帰ったときも、全部姉ちゃんが食べてたもんな」
「何言ってるの。全部じゃないよ。ほとんどだよ」
「変わんないじゃん」
にっこりとしていた顔が、今度はくしゃくしゃになるのを見ていると、今日呼ばれた理由からくる緊張が少しだけ和らいだ気がした。
「暑かったでしょう? 麦茶でも入れるね」
くるりと振り返り、リビングと繋がっているキッチンへと向かう姉。
白地に黄色や薄紫の花が刺繍された丈のあるギャザースカートとウエーブのかかった髪がふわりと揺れる。
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