コリウスの咲く夜に

3/18
前へ
/18ページ
次へ
 汚れとはまだ無縁の部屋の南側、大きな窓の外を眺めると、隣の家との間に設けられた庭には、赤やピンク、白の丸みを帯びたセンニチコウが、うだるような暑さの中で凛として立っていた。    かわいいでしょ。センニチコウっていうんだよ。  興味もないのに花が好きな姉が教えてくれたから、家の庭に咲く花のことをいつの間にか覚えてるようになっていた。  「忙しいから種も買えないし、外が暑すぎてね。全然植えられてないの」  キッチンから流れてくる姉の声を背に窓に近づいてみる。  庭には多くの鉢が置かれていたけれど、確かにそのほとんどが土も入っておらず空っぽのままだった。  とはいえ、ここでの生活を重ねるたび、ひとつ、またひとつと土が埋まり、芽が育ち、花が咲いていくのだろう。  再び室内に目を移すと、テレビの横にあるラックの上に2つの写真立てを見つけた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加