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両親を見送った日。
ひととおり行事が終わった後、葬祭会場の控室に縁遠い親族たちが集まっていた。
僕たちのことを誰が面倒をみるのか、家はどうするのかといった話を襖越しにぼおっと聞いていた。
両親が死んだ悲しみをまだ受け止めきれてなくて、みんなにとっては現実だけど僕にとっては夢の中のような話で、現実感がなかった。
その僕の横を姉がさっと通り抜け、外にも漏れるような大きな声で話した。
「父と母が残してくれた財産がありますし、私も来月には成人するので、ええと……私たちだけで大丈夫です」
姉だって、いや僕以上に悲しんでいたはずだ。
そんななか気丈に振る舞った姉の一言で話はすんなりとまとまり、僕と姉はこれまで家族4人で住んでいた家に2人だけで住むことになった。
両親のいない生活に不安がなかったわけではないが、これまでほとんど会ったことのない親戚の下で暮らすよりはマシだった。
何より始まったばかりの高校生活を変えたくなかったので、ほっとした。
けれど、僕の変わらない生活のために姉が変わった。
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