2.ウチの番犬が優秀すぎる

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2.ウチの番犬が優秀すぎる

「やっぱりこれしかないわ! 仮面舞踏会よ!」    ふふん、と鼻を鳴らして鏡の前に立ち自身の姿をしっかりと確認する。  ストレートの紅茶のような赤茶の髪を今日は緩く巻き、いつもより少し露出の多い赤いドレスに身を包んだ私は我ながら大人っぽいと思った。  黒いレースで出来たオペラグローブを着けた手にしっかりと握られているのは可愛い鳥を模した仮面で、目元と鼻を隠し右側からは華やかな色とりどりの羽が飾りとして付けられている。  夜会にひとりで参加するのは初めてだが、顔と身分を隠すのだから少々失態を犯したところで家には迷惑がかからないだろう。  そこも仮面舞踏会を選んだ理由のひとつだったりする。 「さぁ、行くわ……!」  ごくりと唾を呑み、気合を入れた私はその可愛い仮面をしっかりと被ったのだった。  緊張しながら会場に入ると、すぐにウエルカムドリンクを渡してくれる。  パチパチと弾ける甘いロゼが口に広がり、少し私の緊張を和らげてくれた。 (思ったよりも普通なのね)
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