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素顔のわからない相手との夜会はどんな感じなのかとドキドキしていたのだが、会場内を見渡せば変に密着しているような不埒な人もおらず適切な距離で会話を楽しんでいるようだった。
顔が見えないというだけで基本は普通の夜会と何も変わらないらしく、その事実に安堵する。
「折角だから、私も誰かに……」
「こんばんは。おひとりですか?」
早速私も誰かの会話の輪に混ぜて貰おうかと思ったタイミングで突然声を掛けられドキリとした。
慌てて振り向いた先には、犬の仮面を被った黒髪の青年が私のために持ってきてくれたのか軽食を片手に持って立っている。
「ジェ……ッ!」
どう見てもジェイク。律儀に仮面まで犬のデザインを選んでいるし、髪の色も仮面越しに見える赤い瞳もジェイク。
もっと言えば持ってきてくれた軽食も私の好みだし、仮面で顔が隠れているとはいえ何から何までジェイクである。
なんとかギリギリ名前を呼んでしまうことは耐えたものの、流石に十年も一緒にいるのだ。
仮面程度で間違うはずもなく、私の中でこの青年の正体はジェイクだと確信を持つ。
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