この手紙が届きますように

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 僕の中の藍色が一気に晴れて、心に光が差し込んでくる。全てを思い出した。そう、あの日、事故に遭ったのは僕だった。まさか幽霊になっていたとは、思わず苦笑してしまう。  帰ろう。  家に帰ろう。  住所は分からないけれど、この手紙が導いてくれるはず。  ただいまって二人に言ってから、久しく忘れていたプリンを堪能しよう。  僕は自転車を漕ぎ始めた。  とある町にある郵便局。この郵便局には不思議な噂がある。亡くなった方に手紙を届けてくれる、というものだ。  今日も僕は自転車に跨る。亡くなった人に手紙を届けられる郵便局員として。そして、仕事が終わったら、娘と妻の待つ家に帰り、大好きなプリンを食べるんだ。 了  
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