いただきます

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「生意気言って。でも、本当にその通り。おそらく、彼が生きていたらそこまでの思い出や想い、ではなかったのかもしれない。でも、今は美化された想いも含めて私の宝物。このご飯茶碗もね。たった、2時間よ、一緒に作った時間。それをここまで引きずっている。とても大事な時間だったと思えてる」 そう言って、ご飯茶碗を大事そうに撫でた。 「ねえ、爽、私が死んだら、私の財産受け取ってくれる?」伯母が、突然言った。 「要らないよ。福祉団体にでも寄付したら」 「欲が無いわねぇ」笑いながら言った。 「でも、その茶碗は欲しいかも」 その言葉で伯母は少し嬉しそうに微笑んだ。 「それにそんな事を考える歳でもないでしょう」そう付け加えた。 「万が一よ。爽、あなたがいてくれて良かったわ。ありがとう。」 その時は、何故お礼を言われるのか、自分が何の役になっているのか、さっぱり理解できていなかった。いや、今だって、実は何故お礼を言われたのか、理解できていない。伯母になにかと世話になったのは僕の方だ。 それ以降も、良く伯母の家で食事をし、伯母はいつもその金継ぎの茶碗を使い続けた。
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