いただきます

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伯母はいつもより手の込んだ料理を振る舞ってくれたが、ごはんはしっかり例の茶碗を使っていた。 アメリカでのプロジェクトは、やりがいがあり楽しかったが厳しかった。結局、1年以上、一度も日本に帰られずにいた。 伯母とは主にLINEで連絡を取っていたし、仕事上のアドバイスを貰うこともあった。 相談する度に、アドバイスと共に、「爽がこんなことを聞いてくるなんてね。一人前になったもんだ」というメッセージと大笑いしているスタンプが送られてきた。 ある日、会議中に伯母から電話が掛かってきた。いつも時差を考慮した上で僕の業務後にやり取りすることが多かったし、直接電話が掛かってくるなんて珍しかったので、少し驚いた。 会議の休憩中に折り返した。直ぐに伯母が出た。 「仕事中だったでしょう。ごめんね」弱々しい声だった。 「どうしたの?」 「ううん、どうしても、爽の声が聞きたくて。ごめんね」 「どうしたんだ。ミッちゃん、何があったんだ?」 「爽、声聞けて良かった。ありがとう」 それで電話が切れた。
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