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伯母は、同乗していたたぶん部下の男性と運転手に「今日はもう上がるから」と言って、「承知しました」という言葉に送られ車を降りてきた。
喫茶店に入った伯母は、「優子(僕の母親)が食事作ってるだろうから軽くね」と言いながら、ケーキセットを頼んだ。
部活帰りでお腹が空いていた僕は、ケーキをペロっと平らげる。そうすると、手を付けていない伯母のケーキが僕の目に押し出されてきた。
「えっ、これミッちゃん(伯母:美智子を僕はミッちゃんと呼んでいた)の・・・」
「若いんだから食べなさい。もう、私の歳だと食べたものがそのまま脂肪になるだけなんだから」
伯母は遠慮無くパクつく僕を嬉しそうに見てブラックコーヒーを飲んだ。その見守るような優しげな目が印象に強く残っている。
葬儀も済み、親族と遺言の執行を託された弁護士が伯母の暮らしていたマンションの部屋に集まった。
「相変わらず綺麗な部屋ねぇ。家具もシンプルだし壁も汚れやキズひとつない」リビングに入り、部屋を見渡していた母が言った。
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