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「ここにお集まりの皆様には、よろしければ形見分けとして、お好きな物を何でもひとつ、お持ち下さい。それ以外の財産の全ては、美智子様が指定した福祉団体に寄付されます」
これは事前に聞かされていた話しだから誰も驚かなかったが、解っていても財産分与を期待していたみんなからは明らかに落胆の溜息が漏れた。それでも集まったのは、伯母の高価な持ち物に興味があったのかも知れない。
「さすが、姉さんねえ。すべて一流品ばかりだわ。ねえ、このバーキン(バッグ)、数百万円するんじゃないの? この間、テレビでやってた。ほとんど新品じゃない」クローゼットを開けていた母が言った
「なあ、弁護士先生、車は対象なのか?」誰かが言った。
「はい、お車も対象です。駐車場のB3-22に停まっています」
その言葉に、何人かが駐車場に降りていった。
一通り物色したみんなが戻って来た。
「爽、あなたは見に行かないの?」
「うん、大丈夫」
「ところで、弁護士先生、ちなみに福祉団体への寄付額はいくらぐらい何だ?」
「このマンションと持ち物を処分し、金融資産と合わせて、約3億円ほどです」
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