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その言葉に、またみんなの溜息が聞こえた。
「ところで順番はどうするんだ?」
「まず、爽様、次からは年齢順でどうぞ」
「まあ、爽は可愛がられてたからなぁ。ちぇ、喪主まで務めたのに、俺は最後かよ」まだ結婚していない叔父が言った。でも、叔父は喪主を務めるからと、伯母の遺言で200万円を既に弁護士経由で受け取っている。
「じゃあ、爽、選んで」母親が言った。
僕はキッチンに向かい、食器棚から、紺色の「ご飯茶碗」を手に取った。僕が伯母から貰いたい物はこれだ。
居間に戻った僕に叔父が声を掛けた。「それは何だ?」
「ご飯茶碗です」
「味のある品物だな。金継ぎで直している。どこの名品なんだ?」
「いえ、素人が手びねりで作った物のハズです」
伯母の持ち物=一流品、との思い込みで発言した叔父は黙り込んだ。
「え? そんなもの貰うの? せっかくなんだから、もっと良い物貰いなさいよ。これとか。形見なんだから使わなくても持っているだけでいいんだから」と言って母親がシャネルの女性用腕時計を差したが、無視した。魂胆は見えている。
「そもそも、義姉さんは家で食事してたのかな?」
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