Aquamarine

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 …………ボコボコボコ。  海の中は呼吸が泡となり、まっすぐ海面に上っていく。  静寂の世界で参加者は泳いだり、魚を見たり、写真を撮ったり、思い思いに楽しんでいた。  そんな中、あの男女2人は沈船の前で並んでただ膝をついている。  いったい、何しに来たんだ?  山城が疑問に思っていると、女の方が不意に動き出す。男が着用している浮力調整をする為のジャケット型BCDのポケットを開け、女は何かを取り出した。  おいおいおい……変なもんじゃないだろうな。  確認しに行こうと近づくと2人は普通に泳ぎ始め、山城と目が合う。 『何かありましたか?』  筆談用の水中ノートにサラサラ書いて見せる。女の方が首を横に振り、山城から鉛筆を受け取り水中ノートに書き込んだ。 『何もありません。大丈夫です』 『良かったです。困った事がありましたら言ってください』 『はい』  筆談が終わり、山城は他の参加者の様子を見に行く。  先ほど取り出したものは何かはわからない。  気のせいだったのか……  30分ほど経ち、ピィィと山城は笛を吹いた。海の中とはいえ、笛を吹く事はできる。笛の音は海中を響き渡った。  皆が注目している事を確認すると親指を立て、合図を出す。参加者達は体に負担がないよう、ゆっくりと海面に向かった。
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