Aquamarine

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 太陽は沈んでしまったがまだ微かに明るい。扉の取っ手に吊り下げている『OPEN』のプレートを『CLOSED』にひっくり返そうとした時、後ろから声が聞こえた。 「あの……もし」  振り返るとスーツを着た中年の男性が立っていて、真凛は不思議な気分になる。  海にスーツって…… 「……えっと……なにか?」  髪の毛が少しさみしい男性は、親しみやすい笑顔を見せた。 「こちらはダイビングスクールと聞いてますが……」 「そう……ですが」  ……なぜ、こんな時間、こんなところにスーツの男性がいるのだろう。ここはオフィス街とかじゃないんだけど。 「すみません。私……ダイビングをしたいんです」  不審感を抱いていた真凛は、男性の台詞に驚きを隠せなかった。  ダイビングスクールなのだから、ライセンスを取りたい人が来るのは当たり前。だが、都会にあるダイビングスクールならいざ知らず、ここはリゾート地。スーツで歩いている人はほぼいない。ましてやスーツ姿でダイビングの申し込みにきた人は初めてである。
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