Aquamarine

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「こんな年じゃ、無理かな?」 「いえ、そんな事は……」  50歳前後であろう男性は少し自信なさげな表情をした。  ダイビングに年齢制限はない。  健康の為と退職してからダイビングを始める人も少なくない。彼ならまだまだ潜れるだろう。  ただ真凛の方に即答できない事情があり、返答に窮していた。 「あの……申し上げにくいのですが、この店はあと1ヶ月で閉めようかと思ってまして……今は体験ダイビングとダイビングツアーしか受けてないんです。ライセンス取得なら他のお店を紹介しますよ」  男性は驚き、少し困った顔をする。 「私はこのお店で習いたいのですが……名前がね、気に入りまして。ダイビングをするなら、このお店でと思っておりました」 「名前……ですか?」 「はい、Aquamarine(アクアマリン)、素敵な店名ですね」  父が名付けた店名を褒められた事が真凛は素直に嬉しく思った。 「店名を褒めてもらってありがとうございます。でも……」 「裕一さんとね、約束したんですよ」  男性が口にした名前に真凛は目を見張った。
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