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「父を……父をご存知なんですか?」
「野中祐一さん……若い時、この海で会ったんです。なんだか意気投合しましてね。『宮川、お前が潜りたくなったら、俺がビシバシ教えてやる』って……ああ、宮川というのは私の名前です。宮川龍介と申します」
ペコリと頭を下げた宮川に、真凛も軽くお辞儀をした。
懐かしそうに海を見ながら目を細めて語る宮川を真凛はじっと見つめる。
「あの頃はね、海に潜るなんてとんでもないって私は思ってたんですよ。なので『まぁ、潜りたくなったらお願いするよ』ってね。『約束だぞ』と祐一さんに言われてね」
「すみません……父は5年ほど前に」
ボソボソと言いづらそうに真凛が答えると、宮川は悲しそうな顔をした。
「……あなたがこの店を継いでいると知った時、そうではないかと思いました」
「ですので……あの……」
「もし、よければ、あなたがお父さんと私の約束を守っていただけませんか?」
宮川からの提案に真凛は目を丸くする。
父の約束を私が守る……このお店をたたもうと決断している私が、父の代わりなんてできるだろうか……
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