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自分の幸せが誰かを不幸にするなんて
幸せな人は考えもしない
幸せなその笑顔が誰かを深く傷付けるなんて
これっぽっちも思わずに
「さぁ、笑って」と言う
「辛い時も笑顔でいれば幸せになれるから」
「いつか必ず明るい光が見えるから」と
暗闇の中にしか居場所の無かった人間に
ほんの束の間トンネルに迷い込んだだけの人間が言う
自分達の薄っぺらな孤独を引き合いに出して
「大丈夫、独りじゃない」と
親兄弟にも愛されず周りの全てが敵だった人間に
孤独の中でしか生きられない人間に
心を開けと言う
どうしてそんなに頑なに心を閉ざすのかと言う
生まれてきて良かったなんて
一度も思えた事の無い人間に
”人と一緒の幸せ”なんて
生まれた時からずっと無縁だった人間に
人と一緒にいる事が苦痛と恐怖でしかない人間に
「あなただって本当は寂しいんでしょう?」
「みんなと一緒に幸せになろうよ」
「笑ってさえいれば大丈夫」
「そうすればみんなあなたの味方になってくれるから」
「私達はあなたの味方だから」
使い古されたありきたりな安っぽい言葉を
馬鹿の一つ覚えのように繰り返す
だけど
そう言われて それを信じて
その挙句が
結局いつも裏切られて
前よりずっとずっと孤独で人間不信になっているの
笑顔でさえいれば?
私は
心から笑った事なんて一度も無い
あなた達みたいには笑えないし
誰とも手を繋げない
誰とも一緒にはいられない
人と一緒にいると私は眠る事も
呼吸する事すら出来ない
ねぇ あなた達は考えた事も無いでしょう?
自分の笑顔が
私を深く傷付けているなんて
ほんの一時の薄っぺらで幸せな孤独が
孤独しか知らない私をより一層惨めにして
深い絶望の淵に突き落としているなんて
私を
「可哀想な人」
そう言って憐れむ余裕のある孤独
”自分はこの人よりずっと幸せ”
そう再確認して優越感に浸る事の出来る孤独
それがあなた達の孤独
そんな孤独なんて
私からしたら
ただの”贅沢”でしかないから
孤独でもなんでもないから―
(2020年5月30日作の詩)
<無断転載・複写等禁止>
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