はじまりは悪役令嬢

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 アイナノア様はアダム皇太子にゾッコンだったはずなのだ。 なのに、どうして殺人未遂など起こしてしまったのか。  アダム皇太子は神に愛された男と言われるほどの美貌を持ち、女性たちを虜にしてきた。  長いシルバーブロンドを一つに束ね、長い前髪を左右に分け、アイスグレーの瞳は心を射るような。 彫りの深い目鼻立ちも、薄い唇も彫刻のように美しかった。 しかし、アダム皇太子は根っからの女性嫌いで有名だった。 どうやらその美貌のせいで、いろんな女性から言い寄られて辟易してしまったようなのだ。 そして、そのアダム皇太子は神に仕える身として、25歳までは『童貞』でいなくてはいけず、女性関係は完全に拒絶対象となっていた。 それにはしっかり理由がある。 オールドロアール皇国は、敵国が少ない分、魔物が多い。 魔物を排除するためには、神聖力を高めなくてはいけないのだが、アダム皇太子は無限に神聖力が使える。 が、それは25歳までしっかり『貞操』を守っていたらの話である。 25歳まで貞操を守らねば、神聖力は落ち、国を護ることが出来なくなってしまう。 アダム皇太子は幼い頃から教育を厳しく施され、結果、女はと思うようになった。 そんなアダム皇太子に恋したアイナノアは、婚約者であるアダム皇太子に様々なアピールをしまくった。 無論、悉く失敗したのち、アイナノアはアダム皇太子に媚薬を盛った。 それが彼の逆鱗に触れ、アイナノアに一切見向きすらしなくなったと言う。 のちに、アダム皇太子の気を引こうとしたアイナノアは、男遊びにハマるのだが、婚前前だというのに男女の仲になった男たちは数百人とも言われた。 そしてお腹に子を宿したアイナノアだったが、秘密裏に堕胎しては関係を持つ。を繰り返していた。 噂は国中に広がっていたそうだが、死刑執行人の私の元には届いてはいなかった。 なんせ、刑罰執行が毎日のようにあったため、噂を聞く暇すら与えられていなかったのだから。  アイナノア様がアダム皇太子を殺害しようとしたのは、婚約破棄を申し付けられたそうだ。 なぜなら、本来加護を与えるべくはずの妖精姫としての役目が果たせられていなかったからだった。 男遊びに沼ってしまった頃から、国に雨は降らなくなり、作物は育たなくなり、不作が続き始めたのだ。 そして悪い妖精らが人間に害を成し始めたため、苦渋の決断をした。 それから愛憎劇へと発展し、今日に至る。
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