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透明人間でした。
齢6歳にして、人生詰んだかもしれない。と、ほとんど人生を諦めていた。
なぜなら。
皇国に【妖精姫】として閉じ込められる上、あの女嫌いの皇太子と結婚させられそうになる未来が待っている。というか、このままでは断罪される。
アダム皇太子殿下の逆鱗に触れたら直刑。
生前、私はリビ・ラベルトと名乗っていたオールドロアール皇国の死刑執行人だった。
だから、人がどうしたら苦しみ死ぬのかを良く知っている。
斬首刑なんて簡単に死ねるものではない。
上手く切断出来なければ、何度も何度も刃をあてがわれ、早く殺してくれと懇願することになる。
「ノア、ノア!どこにいる!」
「愛しのノアちゃん、どこー?」
アイナノアと全く容姿が似ていない両親はキャッキャと喜んでいた。
それもそのはず。
妖精王の加護を受けた白鼠を助けた少女は、心根が優しかっただけでなく、美しい美貌の持ち主。
妖精王は彼女の良い所を全て子孫に反映させるようにしたのだ。
美しいアイスブルーの髪は絹のようにしっとりとしており、触り心地は抜群に良かった。
太陽のように黄金色の瞳を持っているが、妖精の瞳は光の加減でいろんな色に見えるらしい。
人によっては赤だとか、緑だとか言うが、伝承では見た人自身の性格を表しているのだとか。
が!!
私を見た人の性格など知ったこっちゃない。
なぜなら、私の姿を見た人なんてほとんどいないのだから。
アイナノア・ディアレフ・バルバトログ齢6歳。
初めて自分の両手を見つめて、口角が緩む。
今宵はブルームーンの日。
そして、皇帝陛下が招待してくださった舞踏会に参加しなければならない日だった。
両親は腰まで伸びたアイナノアのアイスブルーの髪、尖った耳、黄金の瞳を見て言った。
「やっぱり、ノアは【妖精姫】で間違いないわ」
赤毛の髪を纏め上げ、普段とは違う装いのドレスを纏った母、ソフィアは言った。
ソフィアと同じ赤毛の短髪をガシガシと掻き、赤いフロックコートを着た父、レシアルは困り顔をした。
「これは、皇帝陛下に挨拶する言葉を考え直さなきゃだめだな。本当にうちの子が【妖精姫】が生まれてくるとは、夢のようだ」
たった6つのアイナノアに、両親は珍しげに見つめて言った。
普通の家族であるなら、こんなこと言うことはなかったはずだが、残念ながら私たちは普通の家族ではない。
というより、私が普通ではない。
何故なら、ついさっきまでは両親は私が見えていなかった。
初めて両親と目が合ったのだ。
イジメられていたわけではない。
私が透明だったせいなのだ。
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