お盆

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 記憶の中のお母さんが嬉しそうにしてくれた。  私の口元も自然と緩まる。  単純な私はこれだけでお母さんに会えたような気がした。  私は満足して 「またね、お母さん」 とだけ言い残してお墓を後にした。  墓地は不思議とひんやりとした風が通る。  墓地を囲むように植えてある木々からはサワサワと葉がこすれあう音がきこえてくる。  物悲しい風が思い出を刺激する。  お母さんが死んで十年。  今日はようやく気持ちの整理ができて、お墓に来れた。  心が決まれば夏の空のように晴れやかな気分になる。  今までは、お墓の前でいったいなにを伝えたら良いのか分からず来れなかった。  お墓の前で手を合わせても虚しくなるだけだった。  さみしいなんて言いたくなかった。  かと言って楽しいことなんて一度もなかった。  報告するようなことも起こらなかった。  お母さんが死んでから、お母さんに何を届けたらいいのかをずっと考えていた。  答えが出たのはつい最近。  十年ぶりに実家に帰った時だった。
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