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⑥試してみましょう
ホームに着いて、“しまった”と思った。
0時23分発 菊名行きが、目の前を通り過ぎていった。次に来るのは、37分発 元住吉止まり。それが最終で俺の住んでいる日吉のひとつ前の駅、森川の住んでいる綱島のふたつ前の駅までしか行ってくれないのだ。
「元住吉でタクシー拾うから、お前綱島まで乗ってけよ?」
「…はい。」
最後のレモンサワーで限界が来たのか、森川は少し眠そうだ。まあ、電車に乗れればなんてことはないか……。
しかし、最終はそれなりに混んでいる感じだ。ホームに人が多い。
「大丈夫か?森川。」
森川が赤い顔で俺を見上げてきた。
「掴んでもいいですか?」
「ん?」
「袖……逸れないように。」
確かに。今のコイツは、そういう安心できる材料が無いと俺と逸れて…ホームに置いてけぼりになり、やがてホームに寝て駅員さんに迷惑をかけてしまいそうだ。
「いいよ。」
森川が俺のジャケットの袖を掴んだ。手を繋いでやってもいいけど、それは森川的に嫌かもしれないし。
なぜだろう。コイツのことは俺が守ってやらなきゃいけない気がする。
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