①歓送迎会で

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①歓送迎会で

「悪けど穂積(ほずみ)。」 「はい。」 「森川(もりかわ)を送ってってやってくれ。指導係だからって、こんなことさせて悪いけど。東横線横浜方面で駅隣だったよな?」 部長は困り果てた顔を俺に向けてきた。 4月。歓送迎会。俺の後輩で俺が指導している森川(もりかわ)理玖(りく)は、酒に弱いらしく酔い潰れて座敷の一角で眠り込んでいる。 「わかりました。」 「悪いな。じゃあ、お先に。」 「はい。お疲れ様でした。」 中途採用の森川は、先輩や上司に酒を注いで回っているうちに自分も散々飲まされていた。 意識がふわふわ遠のいていく瞬間は、俺の隣にいて。 『穂積先輩、すみません。』 そう聞こえたと思ったら俺に倒れかかって来て、膝の上に着地。まさか、急性アルコール中毒かと思ったら寝息が聞こえて来たのだ。 ただ寝てるだけか。良かった。 森川の寝顔を見れば、瞬時にそう思った。 厄介は厄介だが、コイツは真面目だしみんなとも上手くやろうとコミュニケーションを測るために少し頑張りすぎただけ。 森川を拒否する気持ちは微塵もなかった。 だがトイレに行きたし、会計も済ませたかったので 「森川ー。ちょっと、ごめんなー。」 声をかけつつ、座布団を折り畳んで枕にして森川を寝かせた。
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