ただ、僕が――

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ただ、僕が――

「――うわっ!」 「……いや、急に出てきたのは悪かったけど、そこまでビビることなくね? 正直、ちょっと気分()りいわ」 「ご、ごめんなさい……」  和歌山県の公立校、浦浜(うらはま)高校――その三階に在する、二年二組の教室にて。  三限目後の休み時間、廊下の角の辺りでぶつかりそうになり思わず声を上げる。違うクラスの男子生徒で、何度かすれ違ったことはあると思う。ただ、それはともあれ……うん、不快にさせちゃってごめんなさい。  ところで、彼が威圧的な怖い生徒、というわけでは決してない。ただ、僕が誰に対してもそうなだけ――昔から、誰に対しても臆病(そう)なだけで。
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