あの日、踏み出す勇気をくれたのは――

重大な問題？

『――そうか。なら、もし良かったら今から俺の家に来ないか？』
『…………へっ？』

　20分ほど前のこと。
　時間がある旨を伝えると、続けて届いた東條くんからの問い。あまりに思い掛けない問いに、暫し呆然としつつも承諾の意を示す。……まあ、僕としては断る理由なんてないわけだし。

　……ただ、それにしても……うん、いつ以来だろう。こうして、他の人の家――それも、同級生の家にお邪魔するなんて。なんだか、練習の時以上に心臓がバクバクして――

　……ただ、それはそうと……断る理由なんてないとは言ったものの、一つ重大な問題がありまして――

「……あの、今更ですが東條くん。その……実は僕、パスポートを持っていなくて」
「うん、何の話？」