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……うん、なんかいっそう――
「……その、お邪魔します」
「いやいや、なんでそんな及び腰なんだよ。遠慮なんかしないで普通に入れって」
ともあれ、東條くんに続きおずおずと仕切りを跨ぎ足を踏み入れる僕。そして、そんな僕の様子を可笑しそうに微笑む東條くん。……いやまあ、やっぱりどうしても緊張が――
「――おかえり、宏……あら、その子は?」
すると、玄関へと姿を見せ尋ねる一人の女性。綺麗な人で、何処か東條くんと似た雰囲気が……まあ、初対面でも流石にどういう人か分からないはずもなく――
「ただいま、母さん。こちら、今日野球部に入ってくれた神坂くん。前に話したよな?」
「ああ、貴方が! 息子がお世話になってます。宜しくね、神坂くん」
「あ、はい、神坂羽京と申します! ……その、ですがお世話になっているのは僕の方で……」
「ふふっ、なんだか可愛い子ね。どうぞ遠慮せずゆっくりしていってね、羽京くん」
「あ、はい、ありがとうございます!」
そう言い残し、笑顔のまま奥の方へと戻っていく東條くんのお母さま。ほんのり漂う良い匂いから判ずるに、きっと夕食の準備の最中だったのだろう。……うん、申し訳ないタイミングに来ちゃったな。
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