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捜査③
「犯人は村田トオルですね」
優秀な部下は電話を切ると犯人を名指しした。
言い切るということは相当な自信がある証拠。
今は増田の意見を聞いてみよう。
「ああ、そうだな。お前の意見を聞かせてみろ」
「はい。ダイイングメッセージから読み解きました」
え?あれ、ダイイングメッセージだったの?
「お、おう。お前も分かったのか」
「はい。被害者が握っていた二つの物品、胃腸薬と軟膏についてですが、胃腸薬は消化を促し胃の調子を助けるもので軟膏は炎症を防ぐものです」
そんなことは分かっている。
だから何だというのだ。
部下の報告は淀みなく続く。
「この二つからある職業に関連するワードが導き出されます。それが消防士です」
は?なんで、消防士?意味が分からない。
部下の報告は止まらない。
「胃腸薬の意味する消化は、火を消すという意味の消火に繋がり、軟膏の炎症は火が燃え広がるという意味の延焼に繋がります」
え、そうなの?
まさかの、なぞかけ?
「そして、五人のうち消防士なのは村田トオルです。先ほど、任意同行を求めた所、犯行を認めたそうです」
え、もう犯人逮捕したの?速っ!
「推理に自信が持てなくて事後報告になり申し訳ありません」と頭を下げる優秀な部下だが、俺にとっては非常に助かっている。
了
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