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「なになに? なんなのよ?」
「いいからいいから」
静馬に半ば無理やり追い立てられるようにして、紅香が退出する。
と同時に、翔吾は大きく息を吐き、椅子の背もたれへ身を預けた。
「……で? 今ヤツは?」
「すでに応接室でお待ちです」
同じくため息をつく雪乃に、翔吾は被っている帽子を深く被り直した。
「あー……関わりたくねぇ。いくら依頼料積まれても、突っ返して追い返してぇ……」
「しかし、翔さま……」
「わかってるよ。金の問題じゃねぇからな、あいつとは……」
ひどく重い動きで、翔吾は椅子から立ち上がる。ゆっくりと応接室へ向かうその足取りは、まるで13階段をのぼる死刑囚のそれだ。
「まあ、なんというか……お気の毒です、翔さま」
取り繕うように言う雪乃に、翔吾は力なく片手を上げて見せ、部屋を出る。
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