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またひとつ歳を重ねた。
私は風鈴の音を聴きながら、窓の外を見ている。
ぼんやりとただただ夏の暑い日差しを眺めている。
静かな休日の午後。
風鈴の音とクーラーの音、時々道を通る人の音。
なんと至福の時間なのだろう。
私にだって若い時はあった。スタイルだって良かったし、おしゃれを楽しんだ時期もあった。
今は心地よい物や事が好きだからついついおしゃれが後回しになってしまう。
私は40歳で離婚をした。今から3年前だ。
夏の暑い日だった。暑いのに風があり風鈴の音がしていた。風鈴の音の中静かに夫は私に離婚届を渡してきた。
何が起こったのか理解ができなくてぼんやりしていた私に夫は「好きな人ができた。」と言った。
私は結婚してからずっと夫を好きだった。
他に好きな人はできなかった。でも夫は違ったのだ。
夫がどうして他の人を好きになったのかは私にはわからなかった。そして私たちには離婚をして困る事もなかった。子どももいなかったし、それぞれ働いてお金もあり、主人は別宅を持っていた。
だからというわけではないけれど、あっさり離婚は成立した。寂しさや、虚しさも不思議となく私は今でもびっくりしたまま時が止まっているような気がした。
なのに、今日の風鈴の音は悲しい。なんでだろう。
涙が溢れてきた。
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