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まだ日本が戦争をしていたころのことだけどね、私が好きだった方に召集令状が来てね。
出征の前にあいさつに来てくれたの。
その時、野辺に咲いていたという桔梗を一輪持ってきてくださったの。
桔梗一輪をうやうやしく渡してくださってね。
「お国のために戦って参ります。どうぞ元気で」
「お帰りをお待ちしております」
そう言って別れたけれど・・・彼、特攻に志願していたのだと思うのよ。
残された私は、いただいた桔梗を押し花の栞にして、毎日毎日無事を祈っていた。
それしか出来ることがなかったのよ。
そしてね、消息がわからないまま、終戦になってしまった。
それからは日本中が混乱していて、何のために生きているのかも分からないような日々だったなぁ。
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