「あと1回」をもう一度

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毎週金曜、バイトの後。 「先輩、好きです! オレと付き合ってくださいっ!」 「……」 もう、このやり取りはこれで100回目になる。 「ダメ」 「や、やっぱり……」 今日も撃沈、オレはすごすごと引き下がった。 (今日でキリも良いし……。もう、いいかげん諦めるかな……) ぼんやりと考える。 (いや、プロポーズだって101回だとかっていう何かがあったし! ここはあと1回挑戦してみよう……!) そう決意したオレは、ミニブーケを用意して次の金曜日に臨んだ。 片膝をついて、ミニブーケを差し出して。 「先輩、本当に大好きです! オレと付き合ってください!」 101回目の告白をした。 その結果は、 「アンタも懲りないわね、ダメったらダ〜メ」 意地悪な笑顔で断られるオレ。 くそぅ、この表情も好きなんだよなぁ! けれど、流石に『もう迷惑だろうな』と考えて、オレはそれからは先輩に告白する事をやめた。 金曜日になっても、バイトが終わればそのまま帰る。 それが何週間か続いた後…… 「ねえ、ちょっと」 オレは先輩に呼び止められた。 「なんですか?」 「……なんで、金曜日なのに何も無いの?」 「あぁ……」 流石に、毎週やってたもんな。何か不審に思われたのかもしれない。 「それなら先輩に迷惑だろうと思って、頑張って諦める事にしたんです。告白も101回フラれた訳だし、丁度……じゃ無いかもしれないですけど、良いタイミングかなって」 「はぁ……?」 先輩は、口をぱくぱくと動かしながら何かを言いたそうだった。 けど、代わりに自分の鞄の中から何かを取り出して。 「馬鹿、あともう1回ぐらい根性出しなさいよ!」 と、オレに何かをペシッと投げ付けてから部屋を出た。 「何だ? アクキーかな?」 透明な板に挟まれていたのは、押し花みたいなものだった。 花びらでハートの形が作られている。 「ん……?」 それと一緒に入っていたリボン……。 これって、あの時のミニブーケの時のリボンと同じだ。先輩の好きな色にしてもらったやつ。 「っていうか、この花ってあの時のミニブーケのか!」 え? つまり…… 先輩、もしかしてだけど……喜んでくれてたのか!? そう思った瞬間に、居ても立っても居られなくなった。 オレは慌てて走り出す。 そう、先輩は素直じゃ無い。 意地っ張りで、見栄っ張りで、意地悪で。 だからオレに毎週毎週告白させておきながら、わざと断っていたのだとしたら……!? 「せんぱ〜い!!」 オレは再び『あと1回』をすべく、先輩の元まで走ったのだった。
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