「あと1回」をもう一度

1/1
前へ
/1ページ
次へ
毎週金曜、バイトの後。 「先輩、好きです! オレと付き合ってくださいっ!」 「……」 もう、このやり取りはこれで100回目になる。 「ダメ」 「や、やっぱり……」 今日も撃沈、オレはすごすごと引き下がった。 (今日でキリも良いし……。もう、いいかげん諦めるかな……) ぼんやりと考える。 (いや、プロポーズだって101回だとかっていう何かがあったし! ここはあと1回挑戦してみよう……!) そう決意したオレは、ミニブーケを用意して次の金曜日に臨んだ。 片膝をついて、ミニブーケを差し出して。 「先輩、本当に大好きです! オレと付き合ってください!」 101回目の告白をした。 その結果は、 「アンタも懲りないわね、ダメったらダ〜メ」 意地悪な笑顔で断られるオレ。 くそぅ、この表情も好きなんだよなぁ! けれど、流石に『もう迷惑だろうな』と考えて、オレはそれからは先輩に告白する事をやめた。 金曜日になっても、バイトが終わればそのまま帰る。 それが何週間か続いた後…… 「ねえ、ちょっと」 オレは先輩に呼び止められた。 「なんですか?」 「……なんで、金曜日なのに何も無いの?」 「あぁ……」 流石に、毎週やってたもんな。何か不審に思われたのかもしれない。 「それなら先輩に迷惑だろうと思って、頑張って諦める事にしたんです。告白も101回フラれた訳だし、丁度……じゃ無いかもしれないですけど、良いタイミングかなって」 「はぁ……?」 先輩は、口をぱくぱくと動かしながら何かを言いたそうだった。 けど、代わりに自分の鞄の中から何かを取り出して。 「馬鹿、あともう1回ぐらい根性出しなさいよ!」 と、オレに何かをペシッと投げ付けてから部屋を出た。 「何だ? アクキーかな?」 透明な板に挟まれていたのは、押し花みたいなものだった。 花びらでハートの形が作られている。 「ん……?」 それと一緒に入っていたリボン……。 これって、あの時のミニブーケの時のリボンと同じだ。先輩の好きな色にしてもらったやつ。 「っていうか、この花ってあの時のミニブーケのか!」 え? つまり…… 先輩、もしかしてだけど……喜んでくれてたのか!? そう思った瞬間に、居ても立っても居られなくなった。 オレは慌てて走り出す。 そう、先輩は素直じゃ無い。 意地っ張りで、見栄っ張りで、意地悪で。 だからオレに毎週毎週告白させておきながら、わざと断っていたのだとしたら……!? 「せんぱ〜い!!」 オレは再び『あと1回』をすべく、先輩の元まで走ったのだった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加