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大堀家
田舎ながら、そこそこ栄えている高津輪の富原という所。
大堀家は土地の神をまつっている血筋で、跡継ぎには条件がある。その条件を満たしたものだけが家を継ぐ決まりで、他のものはそれなりに仕事を貰ったり自分でなんとか生計を立てることを選んでいくのが、慣例だった。
「うわぁぁぁ、いやだ。捧げものになるのはっっ。たっ、たすけてくれぇぇぇ。」
真っ暗な中なのにくっきりと浮かび上がる首のないニワトリやシカに追いかけられる夢だ。それも血をまき散らしながら、生臭いにおいまでするのだ。
首が無いのに「お前も捧げものになるのだ。」という声が地面から聞こえて、足がなにかに絡まって転びそうになる。必死に足を動かしているのに前に進まない。首のないシカの鼻息が顔に当たる。夢だと分かっているのに気を失いそうになる。
ここのところ、ずっとそんな夢を見る。起きたときは汗ぐっしょりになってる。
「おれは失格だからな・・・。」
ぽつりとつぶやく男。
大堀家は山の神にささげ物としてシカやイノシシやニワトリなどの首を切って供えるのが生業だ。神話の時代から続く習わしだそうで、実は先祖ははるか西の方から海を渡ってきたのではないかといわれているらしい。
大堀というのも「聖なるもの」という意味の言葉が変化した名前らしい。だからといって瞳の色が違うわけでもなく、髪の毛だって普通に黒くて直毛で、顔も特に彫りが深いというわけでもなく、普通の日本人と特に変わっているわけではない。
そんな言い伝えがあるというだけで、本当かどうかは分からない。ただ、日本の神様にしては首を切ったいけにえを捧げるというのは、ちょっと変わっているから、キリスト教の旧約聖書の話と繋がっているのではないかという怪しげな雑誌の取材も前にはあったらしい。
そんなことは自分には何も関係はない。そんな昔のことだとかルーツとか、どうでもいいんだ。自分は家の仕事には不向きだ。だから家を出たのに。なんで、また関わってくるんだ。ほっといてくれよ。そういいたい。
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