相手方代理人

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相手方代理人

このあたりでは一番土地が高いと言われるあたりに立つ新しいビルの一室。竹見不動産の知り合いの代理人と事務の女の子がいる。 「また悪だくみの片棒を担げっていうんですね、竹見不動産の社長。」 「いいじゃないか、こっちも別に損な話じゃない。あそこは金払いもいい。」 「そりゃあそうですけどね。」 「で、相手の代理人はだれ?」 「松田ウメっていう人らしいですよ。」 「ふーーん。女かあ。」 「そういうこと言うと訴えられますよ。」 「誰も聞いてないじゃないか。」 「私が聞いてますけど。で、どんな話なんです?」 「簡単な話だよ。相続だ。相続人は2人。だから財産を1/2にするだけ。」 「それだけ聞くと簡単ですけど、あの竹見不動産が絡まってて相手が早々と弁護士を立ててきたってことは、相当もめるんじゃないですか?」 「そうだとしても、1/2っていうのは決まってるからなあ。向こうが何を言っても変わらんよ。」 「そういうもんなんですか。」 「そりゃあ昔は『全部長男』っていう相続もあったけどな。」 「え、他の相続人はゼロってことですか?ひどーーい。」 「うん、昔はな。でも今はそういうわけにいかないんだ。」 「遺言書で書いても?」 「そうだ。遺言書でそう書いてあっても無効にできる場合もある。」 「そうなんですか。じゃあ遺言書書いても無駄ってわけですね。」 「そういうわけでもないけどな。」 「なんなんですか、書いてもダメなんじゃないんですか。」 「まあその辺は色々あるんだよ。ケースバイケースってやつさ。」 「あー法律って面倒くさいですねー。」 「だから仕事になるんじゃないか。いいから、仕事仕事。」 「はーい。」 そういいながら、お茶とお菓子をほおばるアルバイトの事務員の女の子。 「先生、それで向こうは1/2じゃなくてもっとよこせって言ってるんですか?むこうも相当欲が深いですよね。」 「いや、そうじゃなくて土地は渡せない。しかし金もないっていうことらしい。」 「えー、それってやっぱり相当欲が深いじゃないですか。土地をやるのも嫌、金も出すのも嫌って。」 「そうだなあ。しかし法律上は1/2の相続は動かせないから、土地を競売にかけて金を折半するしかないと思うけどな。そういう方向で話が進むと思うぞ。裁判所もそういう判断をするだろう。」 「そうですか。じゃあ早く競売にかけちゃいましょうよ。」 「そんなこと勝手にできないんだよ。」 「えー、だって競売にかけることになるんでしょ?」 「最終的にはって言ってるじゃないか。」 「だったら早く競売にかけたって一緒じゃないんですか?」 ため息をつく弁護士。分からない相手にどうやって説明したらいいのかという絶望感が襲うが、別に事務の女の子が法律に詳しくなくても問題はないと思いなおして、向こうの代理人と裁判所に出す書面を作り始める。
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